絵に描いたVOD
Video On Demandに関するコラムですが、VODって正直、現時点では無理だと思う。
って言うか、今のように少数のユーザしかいないからうまく行っているように見えるけど、実際に普及してしまうと技術的に対応ができなくなるんじゃないかな。現時点のインフラでは。
たとえば、DVDと同程度の画質で見えるようにしようと思えば、8Mbps程度の帯域が必要となる。
これに同時接続するユーザが100人であれば800Mbpsだからギガビットのバックボーンがあれば足りる。
だけど、ユーザが増えて1000人になったら8Gbps、1250人で10Gbpsになる。
日本の各プロバイダが相互接続しているJPIXで、10Gbpsのポートを1ポート使うのに月300万。一人当たり2400円となる。
もちろん、この1250人というのは同時接続という話で、実際はある程度分散してアクセスはあるだろうけど、こういうサービスというのはピークタイムにアクセスが集中するのが常で、ユーザの5割とか8割が同時期に集中してアクセスしてくるかもしれない。
少なく見積もって同時接続が5割としても一人当たり1200円。
これはVODサービスを提供する側で必要になるポート使用料だけど、当然対向するISP側もそれに対応してIXへの回線を増強する必要がある。
結局、IXに入って出るだけで、一人当たり2400円のコストが発生する。
それならIXを通さずに直接ピアリングすればいいじゃないかという話もあるが、JPIXも何もボッたくってる訳じゃなくて、それだけの設備を整えればそれだけの費用(と、ちょっとした利益)がかかるからそういう料金にしてる訳で、直接ピアリングしても多少安くなる程度にしかコストは変わらないだろう。
ここで書いたコストというのは、IXのポート料という、必要なコストのごくごく一部だけで、他にもデータセンター使用料、IXまでの回線料、サーバの費用、そしてコンテンツの料金など、ポート料の何倍もかかるコストがある。
(他にもプロバイダとVOD提供者の間で発生するトランジット料があるけど、これは色々ややこしいので(^^;置いとく)
接続回線より深刻なのはストレージ。
現在ある程度容易に入手できて、速度も早いものとしてはファイバーを使ったSAN(Storage Area Network)などがあるけど、これでも高々2Gbps。
たったの250人が同一のストレージにあるコンテンツにアクセスすれば、もうパンクしてしまう。
しかも、この2GbpsというのはSANの通信路だけの速度であって、HDDはもっと遅い。
DVD並みの画質のVODというのは、多くのユーザに提供するには大きすぎるデータ量である(現時点のインフラでは)。
放送型の同一コンテンツを多くのユーザに同報する形であれば途中の経路を集約するとか手はあるけど、ユーザの任意の要求に応えるVODというのは全く違った次元のインフラが要求される。
逆説的だけど、VODは閉塞的な状況だから破綻が見えてないだけなんじゃないだろうか?
VODはまだ閉塞状況から抜け出してはいけない(^^;
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