「放送・通信連携途上における「紐帯関係」の考え方」
例によって西正氏によるピント外れな(^^;コラム
何だか「紐帯関係(ちゅうたいかんけい、または、じゅうたいかんけい)」という言葉を初めて知ったので、言いたくて言いたくて仕方ないから書いた・・・みたいな(^^;
そもそも「信書の秘密」なるものは「送り手」「受け手」以外の第三者(通信を取り持つ通信事業者、全く無関係の他人など)が勝手に中身を見てはいけない、葉書などで見えてしまってもそれを他に漏らしてはいけないという事であって、「送り手」「受け手」が第三者に見せてはいけないという意味ではない。
実際、DMなどで表に「配達の方へ。これはお客様への大切なお知らせですから云々」とか、明らかに通信媒介者へ宛てたメッセージを書いてる所もある。
また、封書でも中身が見える透明の封筒を使っている所もある。
「信書の秘密」というのは第三者が秘密を守らなくてはいけないという意味であって、秘密が守れないものは信書(通信)ではないと考えてはいけない。
コレは論理学の基礎。
だから、放送か通信かという話に「信書の秘密」なんかを持ち込んでも意味は無い。
そもそも、放送か通信かという場合に1対Nか1対1かという分類をする事が間違っている。
1対Nであっても通信と認められる場合はいくらでもある。
放送か通信かというのは、思い付きで意味不明な定義をしなくても、ちゃんと総務省からガイドラインが出ている。
「通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドライン」
これは通信衛星(いわゆるCS)に係るガイドラインだけど、インターネットを利用する場合も、そう外れた内容にはならないだろう。
要するに、「不特定多数に宛てたものは放送で、特定の相手方に宛てたものは通信」という、まぁありきたりな内容なんだけど、ここでも西正氏が初めて知って嬉しい(謎)「紐帯関係」という言葉が出てくる。
「3 考え方」の(1)にある「1) 送信者と受信者の間の紐帯関係の強さの程度 」等だけど、ここにあるように紐帯関係というのは「強いか弱いか」であって、「あるか無いか」ではない。
そもそもIPで通信する以上、お互いのIPアドレスを知っているという紐帯関係は必ず存在する訳で「紐帯関係が無い」などという事はあり得ない。
通信と認められるためには「紐帯関係がある」のではなく「紐帯関係が強い」必要がある。
インターネットを使った誹謗中傷の場合には微妙だが、星の数ほどあるサイトの中での言動なら当面は見逃しておくことになろうが、明らかに1対N的な要素が強まってくると問題視されることになる。今のところは「信書」扱いであるとしたまま、たまたまそれを盗み見ている人がいるという取扱いになっていて、特にサイトの管理人側からすれば、そこまで責任を持ちきれないということで済んでいるのかもしれない。
パソコン通信で誹謗中傷の問題が裁判沙汰になったとかいう事例はご存じないですか。そうですか。
ってか、インターネット上でも名誉毀損だとか、その手の訴訟問題はいくらでもある。
そのためにいわゆるプロバイダ法とかできたのもご存じないですか。そうですか。
代表的なサービスがUSENの「GyaO」であるが、「GyaO」を利用するためには事前に簡単なユーザー登録が求められている。あのユーザー登録を行ってもらうことで「紐帯関係」を構築したことにしようと考えているのだろうが、登録内容が余りに簡易でありほとんど個人情報らしきものが無い点が気になる。
なんて事を書いてるが、これは全く放送か通信かという事には関係無い。
そもそも、
誰でも登録すれば見える程度の弱い紐帯関係では通信とはみなされない。
受信(希望)者の何らかの属性によって受信を拒否する仕組みが無い限り、通信とみなされる「特定の相手方」にはならない。(拒否する仕組みがあってもザルだとダメだが)
このGyaOでのユーザ登録は、単にユーザの属性分析などのためにユーザの追跡が必要なのでやってるだけだろう。
たとえばAという動画を見たユーザはBという動画も見る場合が多いなどという分析をしようと思えば、同じ(アカウントの)人が見たという事を知る必要があるが、どこの誰が見たという個人情報まで知る必要は無い。
また(今やってるかどうかは知らないけど)Aという動画を見た事のある人にはCという広告を出すというターゲティング広告のためにも、こういう情報は必要だろう。
こんな誰でも、大嘘書いても通ってしまう程度の弱い紐帯関係で通信とみなされるなら、受信契約までしてるCS(放送)やNHKは全部通信という事になってしまう訳で、こんなのを「通信とみなすための紐帯関係」と本気でUSENが思ってるなら、かなりマヌケだという事になってしまう。
(USENはそんなマヌケじゃないと思うが(^^;)
そもそも、放送法で放送とは「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」をいうものと定義されているので、GyaOのようなオンデマンド型のものは、たとえ「通信とみなすための紐帯関係」が満たされなくとも放送ではなく通信の自動公衆送信になる。
これは小泉首相が言ってるので間違いない(^^;
だから
ただし、現行の法体系が維持されている間は、通信サービスとしての「紐帯関係」についてもきちんと対処しておかなければならないということだ。
なんて事は無いし、こんなカン違いに付き合って、無意味に個人情報を収集するようなバカな真似はやめたほうが良い。
ユーザの反発を食らって離反を招くか、不必要な個人情報を漏洩させてダメージを受けるのが関の山だろう。
政府の放送・通信改革論者が「GyaO」に着目して、あれは規制が必要ではないかと主張したの
は、現行法ではどう間違っても通信と分類されるものであっても、放送並の視聴者を抱える影響力の強いものであれば何らかの放送並の新たな規制が必要ではないかという話であって、数が多い事が問題なんだから、視聴者の数を減らす以外にこの議論から逃れる方法は無いし、現行法で放送とみなされない外形をいくら整えても無駄。
相手は新しく法律でも作って規制しちゃおうよと言ってるんだから。
という事で、現行法の枠内では何も心配する事無く通信と認められるし、枠が変わるなら現行法の枠内の紐帯関係なんて気にしても仕方ない。
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