「普及フェーズに入るFeliCa電子マネー、今後の課題は?」
一口にFeliCa決済と言っても、イシュア各社によって目的がかなり違うので、それによって課題も解決策も違ってくるんじゃないでしょうか?
まず大雑把に言えば、EdyやSuicaなど旧来(?)の電子マネーは、決済手数料収入を得る事が一番の目的。
まぁ、余禄(^^;として、残高が増えればその金利収入も見込めるとか、紛失してくれれば丸儲け(謎)とかありますが・・・
一方でnanacoやWAONなどの流通系電子マネーは、これまで流通系で発行されてきたポイントカードの発展系として、顧客の購買動向を把握するのが一番の目的でしょう。
小銭のやり取りが減れば店頭オペレーションのスピードアップが望めるとか、釣銭の用意が少なくて済むとか、そういう事も狙いとしてはあるでしょう。
以前の電子マネー「nanaco」はどこが優れているのかという記事でも触れられていますが、利用場所とチャージ拠点の距離を縮める事によって、旧来のプリペイドにあった「現金の固定化」という側面は薄められているように思います。
実際、配偶者(♀)もnanacoを使っていますが、こまめに千円単位でチャージして、nanacoは千円未満の小銭入れ的(謎)な使い方をしてるようです。
単純化して言えば、EdyやSuicaの場合はどの店だろうと決済金額を増やして決済手数料を増やすのが大きな目的で、nanacoやWAONは他店に逃がさずに自店へのリピートを増やすのが目的と、真逆(?)の目的を持っている事になります。
この「目的の違い」は、その母体がイシュアなのか加盟店なのかによるもので、言ってみれば同床異夢である事を考慮しておく必要があるでしょう。
(nanacoはセブン&アイがイシュアでもあるんですが、従来の電子マネーでは決済手数料が高いから自前で始めたという側面もあるようで、加盟店的立場からイシュアになったとも言えるでしょう)
更に話がヤヤコシイ(^^;のは、消費者はまた別の目的(というか期待)を持っているという事。
これは前にも書きましたが、消費者としては
・どこでも
・何にでも
・カード一枚で
使えるというのが望みでしょう(少なくとも私はそう)
従来利用者であるアーリーアダプター層だけでなく、より多くの人にFeliCa決済を使ってもらう必要がある。利用者層を拡大しながら、稼働率の向上を行えるか。
FeliCa決済がキャズムを越えられるかどうかの鍵は、まさにそこにある。
イシュア、加盟店、消費者の3者の目的を考えた場合、考えられる施策の直接の得失は
・加盟店の増加
イシュア:+、加盟店:-、消費者:+
・決済手数料の引き下げ
イシュア:-、加盟店:+、消費者:関係なし
・電子マネー間の相互運用
イシュア:-、加盟店:+、消費者:+
となるでしょう。
マイナスの部分を見てみると、まず「加盟店の増加」による加盟店のデメリットというのは、現在は「Edyが使えます」というのが集客に役立っているとしても、どこでもEdyが使えるようになれば、もはやメリットとはならなくなるという意味。
現在「現金が使えます」というのがメリットにならないというのと同じ事ですね。
まぁ、これはEdyやSuicaのような汎用を目的とする電子マネーであればいずれは避けて通れない道なので、今のうちにメリットを十分享受しておくしかないでしょう。
そうでなければ、nanacoやWAONのように独自発行するしかない。
逆に、nanacoやWAONのような流通系電子マネーでは、少なくともグループ外の競合他社で使えるようにするメリットは全く無い(nanacoをファミマで使えるようにしてもセブン&アイにはメリットが無い)
次に「決済手数料の引き下げ」によるイシュアのデメリットは、まぁ、そのまんまなんですが(^^;、長期的視野から見ると、たとえば決済手数料を半分にしたら加盟店や決済金額が10倍になるのであれば、総額での利益は増えるかもしれない。
実際にかかるコストもあるので単純に利益が5倍とはならないだろうけど、利益が増えるのであれば一考の余地はある。
日本でクレジットカードの使用頻度が低い理由の一つとして、決済手数料が高い(から加盟店が積極的に使用させたがらない)というのがあるので、その轍を踏まないような手数料体系にする必要があるでしょう。
(実際、現状では高すぎるからnanacoが独自で始めた訳だし)
最後に「電子マネー間の相互運用」というのは、EdyでもSuicaでも使えますよという事だけど、現在は加盟店が両者と契約して、どちらでも使えるようにするしかない。
クレジットカードであれば、VISAブランドなら、どのカード会社が発行したカードでもほとんどのVISA扱店で使える(一部例外があるけど、それは置いといて)。
それは、加盟店がそれぞれのカード会社と契約してる訳じゃなくて、アクワイアラーがスイッチして各カード会社との間でオーソリする事によって実現されている。
電子マネーでも同じような仕組みで、加盟店はどこか一社と契約すれば、「FeliCaブランド」の電子マネーは全て使えるというようになれば、加盟店にとっても消費者にとっても大きなメリットとなるでしょう。
まぁ、イシュアにとっては、消費者に「自社を選んでもらわなくてはいけない」という大変さはあるので「-」にしたんですが、キャズムを超えるには避けて通れない道なんじゃないでしょうか?
今更言っても詮無い事ですが、私的には「SONYはEdyでイシュアになるのではなく、FeliCaというブランドになるべきだった」のではないかと思います。
もちろん、立ち上げ当初は「電子マネーってナニ?」という状況で、Edyという実際に使える電子マネーという物を提供する必要があったというのは理解できますが、Suicaなど他の電子マネーが出現した時点で、Edyは他社に売却するなり他社資本を多く入れるなりして独立性を高め、オカネを相互に交換する枠組みを決めて仲立ちに徹する事ができる「ブランド」になっていれば、現在のような電子マネーが乱立するような状況にはならなかったんじゃないかな?と・・・
まぁ、こうなっちまったものは仕方ない(^^;ので、この先を考えるしか無い訳ですが、現在はブランド=イシュア=アクワイアラーというケイレツが出来上がってしまっているので、このケイレツを破壊するような、マルチブランドのアクワイアラーが出て来れば、ブランド乱立への一つの解となるかもしれません。
「電子マネーでは出遅れてしまったけど、これから新たなポジションを探して大きな利益を取りたい」と考える会社があれば、乱立している電子マネーブランドに屋上屋を重ねて激しい競争に巻き込まれるのではなく、マルチブランドのアクワイアラーになる事によって、多くの加盟店と決済高(と利益)を獲得する事も可能かもしれません。
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