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2007.10.12

ペンタブレットで印鑑レス

ワコムのペンタブレットが印鑑レス契約システムに採用

これってどうやってるんでしょうねぇ?
あ、もちろん、タブレットに手書きしたイメージを取り込むというあたりまでは容易にわかるんですが、それを有効な契約書へのサインと第三者に主張するのは、真面目に考えると(?)かなりハードルが高い。

紙の契約書にハンコを押す事によって契約とする場合
・印影によってハンコを特定し、そのハンコを所有している人が契約したものとみなす
・契約文面と同一の紙上に押印する事により、契約内容と押印が不可分のものであるとみなす
という2つの条件が満たされます。

サインでも前者の条件は満たせます。
というか、貸し借りできるハンコよりサインの方がずっと属人性が高いですし、大量生産の三文判と違って同じものを入手できないので、本人が確かにサインしたと立証しやすい。
(まぁ、偽サインのプロなんてのもいるようですが(^^;)

しかし、後者の条件をシステム上で満たすのは、かなり難しい。

まず、改竄の可能性ですが、紙の場合、後でこっそり追記できないように、たとえば金額を手書きで書く場合に「金壱萬五千円」とか漢数字(大字)で書く事で
・頭に「金」を付ける事で、上位に数字を加えられない(たとえば、単に「壱萬五千円」と書いていると、後で「壱拾壱萬五千円」とか勝手に付け加えられるかもしれない)
・漢数字(大字)を使う事によって改竄しにくくなる(たとえば、普通の漢数字で「一万五千円」と書いてあると、横棒足して「万五千円」になっちゃうかもしれない)
という工夫があったり、訂正する場合は訂正箇所に押印する事によって、その訂正は契約者が認めたものであると明示する事ができる。
(逆に、訂正印が無い訂正は、後で「そんなの知らね~」と言われると抗弁できない)

これをシステム化しようとすると、単純に考えれば「電子署名すりゃいいんじゃねぇ?」という話になるんですが、それがそう単純な話でもない。
まず、電子署名するためには鍵が必要になってくるんだけど、その鍵を契約の一方が持っていれば、その鍵を持ってる方は改竄し放題という事になる。
それじゃ、両者がそれぞれ鍵を持って、両方の鍵で電子署名すれば・・・という事になるんだけど、一般の消費者は、まず鍵を持っていない。
「どこでも使える鍵」という共通インフラが無いですから。

もちろん、電子署名した結果出てくる署名文を互いに持っていれば、「確かにその文書に署名した」という事は言えるんだけど、それを持っていても「改竄された書類に署名していない」事の立証にはならない。
法では、「していない」という悪魔の証明はしなくても良いというのがふつ~なので、改竄した(と疑われている)側が、確かに契約の相手方がサインしたのだと証明しなきゃいけない。
じゃあ、サインしたイメージがあれば良いかというと・・・次に続く

サインされた後のイメージデータというのは、電子的なデータなのでいくらでも劣化無くコピーができる。
となると、たとえば前年の契約で使われたサインのイメージを使って新たな契約書を偽造するという事が簡単にできてしまう。
紙にハンコであれば、紙と押印が一体不可分なものなので、確かに新しい契約書に押印されているという事を証明できる。
印影をスキャナで読み込んで・・・みたいな事も実際には行われてたりするけど、それが通用するのはあくまでも窓口の人を騙す程度までで、裁判などになれば、その契約書の印影が確かにハンコで押されたものかどうかという検証もできる訳で、簡単な所でインクジェットプリンタで印刷した程度であれば、朱肉かインクかというので判別できる。

電子的なデータであれば、確かにその場で人が書いたものか、コピーしてきたものかという区別が付けられない。
もちろん、筆圧とか書き順とかパラメータを増やす事によって他人が真似て書いたものとの区別を付ける方法はいろいろあるだろうけど、それにしても所詮は時系列のデジタルデータ列なんだから、そっくりそのままコピーする事ならそう難しい事ではない。
という事で、「確かにその人がサインしたものだ」という所までは技術的に何とかできても、「その文書に対してサインされたものだ」と立証するのはかなり困難な話になる。

もちろん耐タンパー性を上げるなどして、末端の不正を阻止する程度の事はやってるでしょうが、利害が衝突する場合(契約書の有効性の有無が問題になるのは衝突する場合だけで、利害が一致しているのならお互いに「有効だ」と認めれば良いだけ)、「改竄が無い」「確かに相手方がサインした契約である」という事を第三者に証明するというのは難しいんじゃないかな。

まぁ、今回のは自動車保険という事で、実際の契約内容は保険証券という形で残る事になるし、代理店が架空契約したとしても消費者には何の迷惑にもならない話なので、ある程度はナァナァで(^^;済む部分もあるでしょうが、「金融や医療分野で広がると見込んでいる。」というのは、また違った難しさ(というか厳格さ)を求められる事になるんじゃないでしょうかねぇ?

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